ウッドデッキが足場設置や塗装作業に与える影響とは
外壁塗装工事において、ウッドデッキの存在は見落とされがちな障害要素のひとつです。特に足場の設置や塗装作業の進行に大きく関与し、施工全体の安全性や効率に直結する場合があります。例えば、外壁に接するように設置された大型のウッドデッキは、足場の支柱設置を物理的に妨げるケースがあり、仮設計画の見直しや部分的な解体を余儀なくされることもあります。
また、デッキの高さや構造が複雑な場合には、職人の移動動線を確保するための仮設足場が増設され、作業コストや工期の延長にもつながります。実際に、ウッドデッキが地面に固定されているケースでは、設置箇所の変更が難しく、足場設計の自由度が大きく制限されるため、現場での調整が発生しやすくなります。
ウッドデッキの構造だけでなく、材質にも注目が必要です。天然木を使用したデッキでは、塗料や高圧洗浄の影響を受けやすく、表面が変色したり、ひび割れの原因になることもあります。塗装時に使用されるシーリング材や下塗り塗料が飛散してしまうと、美観だけでなく耐久性にも悪影響を及ぼす恐れがあるため、特に注意が必要です。
ウッドデッキの影響を受けやすい工程と内容
工程
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影響内容
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対応策の一例
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足場設置
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支柱設置位置が制限される
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足場の一部増設または仮設台の使用
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洗浄作業
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高圧洗浄による水の跳ね返り
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養生シートでの全面保護
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下地処理
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デッキ付近の下地調整が困難
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手作業による慎重な処理
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塗装作業
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塗料飛散による汚損
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飛散防止ネットとマスキングの徹底
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最終点検
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死角になりやすく仕上がり確認に支障
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足場の見直しと二重チェック
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これらの対応には、追加費用が発生することもあり、一般的に1日あたり1万円前後の仮設工費が加算されるケースもあります。また、デッキを部分的に撤去してから再設置する場合には、木材の再加工費やビス交換なども発生し、数万円〜十数万円単位の追加コストになることも想定されます。
さらに、安全面の観点からもウッドデッキがある現場では事故リスクが高まることが分かっています。塗料缶の落下、職人の転倒、脚立の安定性の低下など、作業環境における課題が複数重なります。結果的に、事故防止や再施工のリスク回避のためにも、事前の現地調査と的確なデッキ処理計画が欠かせません。
ウッドデッキの存在を前提とした外壁塗装では、事前の情報共有と見積もり段階での適正な判断が極めて重要になります。塗装業者に対しては、現場調査時に「ウッドデッキの干渉可能性」や「必要な保護処理」について具体的な説明を求め、施工計画と合わせた形で確認を進めるべきです。
養生で対応できるデッキとできないデッキの境界線
外壁塗装時にウッドデッキが施工の障害になると判断された場合、すぐに解体や撤去が必要とは限りません。多くのケースでは、適切な養生によって塗料の飛散や洗浄水の跳ね返りからデッキを守ることが可能です。しかし、すべてのウッドデッキが養生だけで完全に保護できるわけではなく、その判断には「構造」「スペース」「材質」「施工環境」などの複数条件を総合的に評価する必要があります。
特に重要なのは、外壁とデッキの距離です。30cm未満の狭小スペースでは、マスキングやシート固定が難しく、デッキ下部まで塗料が入り込んでしまうリスクが高まります。加えて、足場設置後にできる作業スペースが限られることで、養生作業そのものが困難になるため、物理的な「作業可能域」も一つの重要な判断材料となります。
養生対応可能かどうかの判断基準
判断項目
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養生対応可能な条件
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養生対応が困難な条件
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外壁との距離
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30cm以上
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30cm未満
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デッキの高さ
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地面から60cm未満
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高床式・段差構造
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素材
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樹脂系・アルミ
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天然木・経年劣化材
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構造
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単純・直線構造
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複雑・曲線・多段階
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足場の設置位置
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壁から独立可能
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デッキ上にしか設置不可
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また、養生の種類にも工夫が求められます。一般的なブルーシートでは風でめくれやすく、塗装面からの剥離事故に繋がる恐れがあるため、専用の飛散防止シートやマスカーなど、建築用の高耐久養生材を使う必要があります。さらに、固定方法も単なるガムテープではなく、素材に応じて養生用クランプや専用バンドなどの使用が推奨されます。