施工不良とみなされる基準とは?
外壁塗装において「はみ出し」が発生した場合、それが施工不良とされるかどうかは非常に重要な判断ポイントとなります。なぜなら、施工不良と認定されれば業者側に補修義務が生じ、追加費用なしで対応を求めることができるからです。一方で、単なる見た目の問題で「許容範囲内」とされた場合は、補修を依頼しても費用が発生するケースが少なくありません。
一般的に、施工不良かどうかを判断する際の基準には、以下のような3つの観点があります。
- 建築基準法に準じた品質規定を満たしているか
- 業界団体や専門機関が示す施工ガイドラインとの乖離
- 客観的に見て著しく仕上がりが劣っていないか(第三者評価を含む)
まず建築基準法においては、外壁仕上げに関する直接的な「はみ出し」の規定は存在しませんが、「雨水の侵入を防ぐ構造」であることが明記されています。つまり、塗装のはみ出しが原因で防水性を損ねている場合、それは構造不良=施工不良と判断される可能性があります。
また、塗装業界でよく参照されるのが、一般社団法人日本塗装工業会(JPMA)が提示している施工基準です。この中には「塗膜の仕上がりにムラや垂れ、塗料の飛散がなく、色むら・塗り残しがないこと」が適正品質の指標として記載されています。この指標から外れる場合、施工ミスとして指摘する根拠になります。
以下は、実際にクレームが受理されやすい事例と、それが施工不良と判断される根拠の例をまとめたものです。
発生状況
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判断基準との乖離
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施工不良とされる可能性
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サッシに塗料が付着し除去困難
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養生不足・施工管理の不備
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高い
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マスキングが不十分で、外壁以外の部位に飛散
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塗装基準における「飛散防止処置」義務に反する
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高い
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雨どい・エアコン配管などに塗料のたれがある
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誤って塗布した後に手直しを行っていない、仕上がり基準未満
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中〜高
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外壁の一部で塗り残しや色ムラがある
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塗膜の厚さ・均一性が施工ガイドラインの基準を下回っている
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高い
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外壁以外の設備(郵便受け、照明など)への塗料付着
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養生範囲の設定ミスや施工順序の不備
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高い
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特に注意したいのは、上記のような問題が「繰り返し」や「複数箇所」にわたって発生している場合です。このようなケースでは単なるミスではなく、「施工体制や品質管理が根本的に甘い」という判断につながり、消費者庁や住宅リフォーム・紛争処理支援センターなどへ相談することで、第三者機関の調停に進む可能性も出てきます。
許容範囲内の仕上がりとは何か?
外壁塗装の「はみ出し」が必ずしも施工不良とは限らない理由の一つが、「仕上がりの許容範囲」という考え方の存在です。消費者が目視で気になる点があっても、それが一定の基準内であれば「問題なし」と判断されるケースもあります。では、その許容範囲とはどこまでを指すのでしょうか?
まず基準となるのは、塗装業界内で広く参照されている施工品質ガイドラインです。これには以下のような記述があります。
- 離れた位置(1.5〜2.0m程度)から目視で確認し、明らかに目立つ欠陥がないこと
- 美観を損なわず、機能面(防水性・密着性)で問題がないこと
- 不自然な厚塗りや垂れ、にじみなどがないこと
上記に該当しない微細なはみ出しや飛散であれば、「生活上支障がない」として補修対象にならない場合が多いです。
以下のような事例は、許容範囲内とされやすいです。
状況
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専門家判断の理由
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クレーム対象となるか
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外壁から1ミリ程度のラインがサッシに付着
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近距離でしか認識できず、清掃・機能に影響がない
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対象外
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軒天と外壁の境界で色のにじみが微かにある
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光の加減でしか見えず、機能面・耐久性に影響しない
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対象外
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雨樋の裏側に塗料がわずかに残っている
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見えにくく、清掃・交換の必要性がない
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対象外
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乾燥時にわずかに塗料が縮んでシワになっている
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塗膜の機能が維持されており、ひび割れや剥がれではない
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対象外
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このように、専門家や第三者機関が判断する基準では、「見た目の美しさ」よりも「生活上の支障があるかどうか」が大きな要素として扱われています。そのため、消費者としては「自分の感覚」だけで判断せず、第三者の意見を求めることが非常に有効です。